第6回 精神の生態学へ
ゲストの山田です
ベイトソンに興味を持った理由
デカルトからベイトソンへ の本を昔に読んだ (3年前くらいだった希ガス)
ベイトソン的世界観、がおもろかった
元々は一冊のデカい本で絶版だったので数万円した
人類学者、社会科学者
いろんな分野を横断して研究していた
イルカのコミュニケーション、民俗学、統合失調症、アルコール依存症...
システム思考の切り口であらゆるものを分析していた
他の分野のアナロジーを用いて分析する
自然の枠組みは分野によっては違えど、知の枠組みは共通するものがある
ex). 首長のいない集団の傾向が、人のような非対称な動物ではなくヒトデのような対称的な動物と似ている
サイバネティクスとの関係性
サイバネティクスの理論を精神分析や人類学に応用して推し進めた
ある目的のために外界に働いた行動の結果をフィードバックとしてまた入力し、行動に役立てる相互作用は、人間・生物や自動制御の機械で同じだよね
物事の相互作用と階層構造を見つけて分析する
特定の部分を切り取って分析したり解決策を作ったりするのはシステム全体のエラーを引き起こすのでダメだ
ある事象をAとBに分けるのではなく、AとBの相互作用をシステム的に分析する
部分的な治療を薬で行う行為を否定
実際の研究例
パプアニューギニアのイアトムル族
我々が考える一般的な民族構造は、ヒエラルキー
トップが偉くて下にいくにつれ権力が弱まる
ただ、イアトムル族は首長という概念は存在しない。上からの制裁はなく、横からの制裁が存在する
この関係性を、非対称的な動物(頭というトップがある存在)と対称的な動物(ヒトデ)の比較をした
アナロジーの方にある事実を分析対象に持ってくる
https://scrapbox.io/files/64a3fdc614dd11001bdec47b.png
国民性の研究
国ごとにどんな行動様式があるか、を研究しようとした
ベイトソンは、これに対していくつかの批判を想定したうえでそれに対する反論を用意していて、それが非常に面白い
実際の批判と反論の例
Q. 国ごと、と言っても国の男性、女性とか階級とかで差は生まれるでしょ?
A. 男性・女性の中で以外は一定存在するが、男性の性格が女性の性格を助長するような相互作用的構造になっていることが多い。どちらか一つではなく、このパターン自体がその人にインストールされる。
たしかに、部活の先輩・後輩の関係性を見ると、しごかれた後輩が先輩になるとしごくようになるのはそうなのかもしれない
バリ島の教育
バリ島では分裂生成が起きないような教育が施されている
親が子に悪戯をすると、子は親に悪戯を仕返す。
ただ親はそうされた場合、すぐに子供に対して関心を向けなくなる。
子供はさらに別の苛立ちというのを見せるが、親はそれにも乗らずに楽しむ。
これによって相手に対して相互作用的かつ累積的な反応をしても報われないことが教育される。
強度が一定してそれ以上強くならない状態 (高原状態、定常状態、プラトー)
統合失調症の研究
メッセージAと、それに矛盾するメタメッセージBが存在する
その矛盾から逃れられないメッセージCが存在する
「私と仕事、どっちが大事なの?」はまさにこの状況
メッセージAはどちらかを選ばせているが、このメタメッセージは「仕事
ex.) 統合失調症の子供が生まれるプロセス
母親は、子供からの愛を感じると"何故か"不安になるが、愛情深い人だと思われたい。
不安になってないことを隠すためにより愛情を表現する
子供は、母親を失いたくないので愛を感じさせる行動をするが、それによって母親は不安になる
「疲れてるでしょ、寝なさい」というと、その裏にある「うんざりだ、寝てくれ」というのが読める
ただ、これは認めたくないので否定する。母親は優しいと考える
母親は優しいと考えて愛を示すと、母親が恐怖を感じてしまう
子供がおとなしく離れてしまうと、母親は「愛情深い人だと思われたい」ので罰するか近づく
つまり、メタメッセージを理解しても、メッセージをそのまま理解しても、罰が下る。これがダブルバインド状態であり、これによって正しいレベルでのメッセージを理解できなくなる
統合失調症の犯罪者が裁判とかの質問への回答がチグハグな理由はこれ
学習理論
学習Ⅰ
特定の条件に反応できるようになる
ex). 音を覚えて出せる
学習Ⅱ
学習Ⅰが早くなる
ex). 音を覚えるのが早くなる
学習Ⅲ
学習Ⅱが破壊・再構築される
ex). 音の正しさ、綺麗さが変わる
学習Ⅳ
人間じゃ到達できない領域
(ベイトソン本人も言語化ができなかったと思われる)
学習Ⅲについて深堀り
村上春樹の「オリジナリティ」の定義との関係性
既存の価値観が壊され、やがてそれが既存の価値観の一部として取り込まれる現象
東日本大震災、コロナのパンデミック
普通が壊され、メンタルに異常をきたす
学習Ⅲを空想する
首都圏に隕石が落ちて都市部が機能不全になったらどうなると思う?
感想
ベイトソンの考え方の真髄に触れていただけただろうか
ベイトソンの思考プロセスや発想は神秘的
会社とかでもセクショナリズム、タコツボ化はよくある話
この構造を理解できてないが故にコミュニティづくりにミスることがある
物事を分析する上で、相互作用を分析するのは非常に大事